
フリーランスの事務作業を効率化!ペーパーレスで書類整理のススメ
フリーランスにとって「事務作業」は避けて通れない道です。外注先への支払い・案件で得た報酬の請求・確定申告など、事務作業が必要な場面は多く存在します。「請求書やレシートなどの書類整理が苦手…」という方や、「事務じゃなくてもっと本業に時間を使いたいのに…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フリーランスの事務を効率化させる書類整理のポイントをご紹介します。なかでも、紙の書類をデータに移行させるペーパーレス化は、事務作業の時短やミス防止の観点で非常に有効です。ぜひ日常の事務に取り入れてみてはいかがでしょうか。
書類整理できてなくて確定申告が怖い…
フリーランスあるあるの悩みですな
フリーランスが書類整理にこだわるメリット
書類整理にこだわると、フリーランスの仕事環境を改善できます。事務作業の効率が上がると、本業に回せる時間が増えます。さらにペーパーレス化を進めると紙の書類を管理する必要がなくなり、紛失や汚損が発生するリスクの軽減も可能です。また、電子帳簿保存法では、個人事業主(フリーランス)に対して請求書や領収証などのデータ保存を義務づけています。
事務作業を効率化できる
通常、一般企業では総務・経理・労務管理などの事務作業は一定の人員に割り振られます。一方、フリーランスの場合は一人で事務作業を進める必要があります。日々手元に届く書類を正しく整理することで、事務作業を効率よく進められるでしょう。具体例は、領収書や請求書を月ごとにまとめる工夫や、預金口座の動きを毎週記録する工夫です。小さな積み重ねが差を生み、確定申告時期の負担を減らしてくれます。
ペーパーレス化で紙の管理から解放される
フリーランスの書類整理は紙だけにこだわる必要はありません。近年は請求書や領収書、入出金明細など多くの書類のデータ発行が可能です。特に口座引落の明細などは、郵送からWEB発行へ完全に切り替えられたケースも多く存在するでしょう。紙管理→データ管理への移行、すなわちペーパーレス化は事務作業の負担を軽減させます。紙をまとめて保管する習慣がなくなると、手作業で書類を出す必要がなくなり、PC上のデータから簡単にアクセスできます。作業場のデスク周りもすっきりするでしょう。
電子帳簿保存法に対応できる
電子帳簿保存法とは、電子データで発行された国税関係書類の保存要件を定めた法律です。ここでの国税関係書類とは、請求書や契約書など税務申告に関係する書類を指します。保存要件は「改ざん防止の対策」「ディスプレイやプリンタの設置」「検索性の確保」の3点です。電子帳簿保存法自体に罰則はありませんが、税務調査の際などに書類を提示できなければ、青色申告の承認取り消しなどのペナルティもあり得るため注意が必要です。制度の概要やQ&Aについては、国税庁の特設サイトを参照しましょう。
参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
フリーランスが管理する必要のある書類
フリーランスが業務上取り扱う書類と、その管理方法を紹介します。ここでは大きく分けて「収入」「経費」「預金」、3種類の性質を持つ書類を取り上げます。各書類をジャンル分けした上で、適切な保存方法と管理を徹底すると、事務作業の効率が向上するでしょう。
確定申告に向けて書類整理が必要
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までです。限られた期間に必要書類を集め始めて処理しようとすると、多大な負担がかかります。そこで、普段からジャンルや期間で適切に分類しながら書類整理を進めることが大切です。例えば、請求書や領収書を1か月ごとにフォルダにまとめて保管しておくだけでも、申告時期に発生する事務作業の負担が大きく減ります。フリーランスの確定申告について詳しく知りたい方は、以下の関連記事もぜひご覧ください。
収入関係の書類
収入を証明する書類には、取引先に発行した請求書や、取引先から受け取る源泉徴収票・支払調書などがあります。これらは1年の売上を申告するために必要な書類です。発行請求書は、作成するたびに特定のフォルダに保存すると管理が容易です。源泉徴収票や支払調書は、取引先によっては紙ベースでしかもらえない可能性があります。決まった場所に保管する意識を持つとよいでしょう。
なお、確定申告に際して注意したい点が、12月分の売上です。翌年1月の入金分であっても、取引が12月であればその年に発生した収入として計上する必要があります。請求日と入金日のズレがあると混乱しやすいため、取引ごとに記録を残しておくことが重要です。
経費関係の書類
経費に関する書類にはレシート・請求書、・領収証などがあります。クレジットカードの利用明細やWEB発行の領収証も参考書類として活用できます。フリーランスの場合は、事業用と個人用の出費を明確に区別することが重要です。プライベートの支出は当然ながら経費として認められません。その上に、事業利用分と個人利用分が混ざると管理が難しくなります。事業用のクレジットカードや口座引落を活用し、事業経費のみを拾い上げられるように工夫しましょう。
預金関係の書類
預金関係を記録する上で、通帳のコピーやネットバンキングの入出金明細が役立ちます。口座の動きが分かれば、日頃の帳簿付けや収支の確認が楽になります。事業の流れや資金の安定性を確認する上でも役立ちます。フリーランスの場合は、なるべく銀行口座の数を抑えることをおすすめします。複数の口座を開設して事業用として利用すると、経費の管理が煩雑になりやすいため注意が必要です。また、個人口座から資金を移動させる際も、後から追いやすいように逐一記帳する習慣をつけましょう。
ペーパーレス化に向けた具体的なアイデア
前述した書類の例を踏まえて、ペーパーレス化の具体的なアイデアを4つ共有します。紙ではなくデータで取得できる書類は、徐々にWEB取得へ切り替えることをおすすめします。どうしても紙でしか発行できない書類は、スキャンしてデータ化する手段が有効です。データ化した書類は、会計ソフトに打ち込み記帳を進めましょう。
スキャナーやScanSnapを活用したデジタル化
紙の書類をデータ化する際は、スキャナーやScanSnapの利用が便利です。スキャンするだけでPC上のフォルダに格納でき、自動でファイル名を付与する機能も活用できます。紙のまま保管するより検索性が高まり、必要な書類をすぐに取り出せる点が大きなメリットです。ただし機器の購入費用がかかり、設置スペースも必要になる点は考慮しましょう。経費のレシートや請求書など、どうしてもデータでもらえない紙の資料が多い方には、作業効率を大幅に上げられる実用的な方法といえます。
PDFやCSVを取得してデータ管理
WEB領収証やネットバンキングの明細は、PDFやCSV形式で取得して保存することをおすすめします。紙の書類を探す手間が省け、必要なときにすぐ確認できる点が大きなメリットです。おすすめは毎週〜毎月の決まったタイミングでダウンロードし、用途ごとにフォルダへ仕分けする管理方法です。ただし、データ取得するための会員用サイトにはログインIDやパスワードが必要となるため、忘れないように、また情報漏えいが起こらないように自分の範囲内で管理することが大切です。
事業用カードで支払いを一元管理
事業用のクレジットカードを持つ方も多くいらっしゃるでしょう。事業用とプライベート用の出費を明確に分けるために、決済方法はすべて一本化することをおすすめします。現金払い、クレジット、さらには請求書払いで複数の口座を使うと、管理が煩雑になります。可能な限りカード支払いに絞ると、カード会社から届く利用明細で支出を一目で確認できます。毎月の出金も1回のみで、月次の出費を把握しやすくなります。カード会社のWEBサイトから明細をCSVやPDFで取得できるため、会計ソフトとの連携もスムーズです。
ペーパーレス化→会計ソフトの黄金ルート
書類整理とペーパーレス化を進めるうえで、会計ソフトは非常に相性の良いツールです。多くのソフトはPDFやCSVのデータ取り込みに対応しており、銀行明細やカード利用データを会計帳簿に自動で反映できます。取り込んだデータから仕訳を作成できるため、一行ずつ記帳する手間や転記ミスを大幅に削減できる効果があります。日々の書類整理と申告準備をシームレスにつなげられるので、確定申告前に慌てる必要もなく、効率的に経理作業を進められます。
会計事務所勤務の目線でお伝えしたいアドバイス
私は現在、本業として会計事務所に勤務しております。日々の業務でさまざまな個人事業主の方の書類、データに触れた経験で感じたアドバイスを、僭越ながら3点ほどお伝えしたく思います。書類周りをなるべく簡素化させた状態で、毎日コツコツと事務作業に取り組むと、確定申告時期でも焦らず本業に取り掛かれるでしょう。どうしても事務作業が苦手な方には、思い切って税理士に外注する手段もあります。
書類整理の理屈は分かったけど自分じゃできない…
税理士の先生にお任せしてもいいんじゃない?
毎日5〜10分の作業が将来の自分を助ける
経理の日常業務を経験する立場からおすすめしたい工夫が、毎日の小さな積み重ねです。収入や経費の整理を月単位でまとめてやろうとすると、量が膨大になり負担も大きくなります。その点、1日5〜10分だけでも領収書をスキャンしたり、データをフォルダに保存したりすれば、申告期に慌てる必要がありません。気分転換のタイミングや寝る前のひと仕事として取り入れるのも効果的。結果的に本業に集中できる余裕が生まれます。
決済手段はなるべくコンパクトに
口座やカードを増やしすぎると管理が複雑化し、どの支払いが事業用なのか把握するだけで時間を取られがちです。事業規模に応じて必要最低限に絞るのが効率的で、特に現金払いは記録が漏れやすく、整理の手間が格段に増えるため可能な限り避けたいところです。どうしても請求書払いが発生する場合は、支払日をあらかじめ決めておくとキャッシュフローが安定し、帳簿への記録もまとめて処理しやすくなります。
書類整理が苦手な方は専門家に外注がおすすめ
書類整理がどうしても苦手、時間を取られるのがストレスという方は、思い切って専門家に外注するのも有効です。税理士に依頼すれば、確定申告に必要な書類の種類や保管期間などを具体的にアドバイスしてもらえ、整理の段階からサポートを受けられます。もちろん費用は発生しますが、事務作業の負担を軽減して本業に集中できるメリットは大きいものです。自分で抱え込まず、プロの力を借りるのも賢い選択肢といえるでしょう。
まとめ
今回はフリーランスにおすすめの書類整理について説明しました。ペーパーレス化に取り組むことで、面倒な紙の管理から解放されるメリットがあります。請求書や引落明細など、近年はWeb発行に対応する会社も数多く存在するため、書類整理を見直す機会にペーパーレス化を進めましょう。
また、フリーランスの業務効率化には、事務作業の手間を減らすことが大切です。データ保存→会計ソフトへ取り込み…この流れを定着させると、確定申告の所要時間は大きく削減できる可能性があります。自力で対応できる部分は効率化を進めながら、法令対応や税務の面は税理士に相談することをおすすめします。
Photo by Wesley Tingey(Unsplash)